タネイモ不足に低収量…それでも兼業農家が秋ジャガイモを作る理由

秋ジャガイモ栽培の課題

秋ジャガイモ栽培には、春作にはないいくつかの厳しいハードルがあります。主な課題は以下の通りです。

タネイモの種類が少ない。

秋ジャガイモで手に入る品種は、そこまで多くありません。 ニシユタカ、デジマ、アンデスレッド、さんじゅう丸、ながさき黄金、アイマサリくらいです。長崎で開発された品種が多く、他にはアンデスレッドがある程度です。

タネイモが高い。

大体1kgで600円くらいです。高いお店だと、800円くらいします。 (例:種苗店 600円/kg、JA 800円/kg、コメリ 700円/kg) 春ジャガイモのタネイモなら 400円/kg くらいで手に入るので、それに比べると秋ジャガイモのタネイモは割高です。

タネイモの入手が困難。

春栽培のジャガイモが主流なので、秋栽培はマイナーです。そのためか、売られている種芋の量も少なく、入手性が悪いです。

タネイモの発芽率が悪い…。

タネイモが保管中に腐ったか、植え付けてから腐ってしまったのか、発芽率が悪いです。 「さんじゅう丸」の発芽率は10%ほどでした。40個くらいタネイモを植え付けましたが、発芽したのは3個くらい……。2kgも買ったのに、低すぎる発芽率です。 他の品種はちゃんと発芽したので、さんじゅう丸のタネイモ自体の状態が悪かったのだと思います。あるいは、保管状況が悪く、暑さでやられてしまったのかなぁと考えています。

収量が少ない…。

春ジャガイモの場合、タネイモ1に対して収量は15倍くらいになります。 一方、秋ジャガイモの収量は、タネイモ1に対して10倍くらいになれば良い方です。2025年は5倍くらいにしかなりませんでした。夏が長く、冬が来るのが早いと、栽培期間が十分に確保できないのが原因です。(詳細はこちらで解説しています)

このように、種類が少ない、高い、入手困難、低発芽率といった問題が重なるため、秋ジャガイモ栽培の難易度は高くなります。

売値が春ジャガイモと一緒。

上にも書きましたが、これだけ悪い要素があるにもかかわらず、市場価格は春ジャガイモと変わりません。 秋ジャガイモの収穫前に北海道産の収穫が終わるため、その在庫が価格上昇を抑えているからです。北海道が不作であれば価格が上がるかもしれませんが、基本的には厳しい状況です。

秋栽培の良い点

上記のように生産面でのハードルは高いですが、それを補って余りあるメリットが「収穫後」に存在します。

保存可能な期間が長い

夏の場合は、高温による保存中の腐敗リスクが高いですが、冬で外気温が低いので冬は腐敗や萌芽などのリスクが少なく、常温保存でも翌年の3月~4月まで可能です。

端境期の出荷が可能

秋に栽培したジャガイモを4月くらいまで保存できれば、高く売ることが可能です。北海道産の貯蔵ジャガイモも3月頃には少なくなってくるので、このタイミングで直売所へ出せると競合が少なく、売りやすくなります。

食味の向上

個人的な感想ですが、秋ジャガイモの方が甘みやホクホク感を強く感じます。

最後に

これだけ苦労が多くても、私が秋ジャガイモを栽培するのは兼業農家だからです。 平日は仕事があるため、畑に行ける時間は限られています。その点、ジャガイモは毎日のような管理や収穫に追われることがなく、週末中心の作業でも無理なく育てられます。 限られた時間と農地で効率よく収益を上げるには、手間があまりかからず、かつ競合が少ない時期に長く販売できるこの作物は手放せません。

今後は、種苗法に注意しながら、「春作で収穫できた小ぶりのジャガイモ」を秋栽培のタネイモに回そうかなぁと考え中です。 春ジャガイモのタネイモとして「アンデスレッド」の入手性は高いので、まずはこれを栽培し、そこから採れた小芋を秋用のタネイモとしてリレー栽培しようと考えています。